ビジネスマンに「名人」はいない。同様に、ビジネスレポートに名文は必要ないのだ。会社のトップは、レポートに名文を求めいていない。しかし、具体的な成果、数字が盛り込まれているか厳格に確認する。一流のビジネスレポートとは、兵法者の剣裁きにも似ており、一分の隙もないものである。
入社一年目の頃を思い出してみよう。あなたは、文章の得手不得手に関わらず、大学を出ていようがいまいが、入社したてのころは何度もレポートを書き直しされたことだろう。それも当然である。ビジネスマンとしてのキャリアは皆無であるのだから。
それから数年経過してあなたは、新入社員に対してレポートの書き方を指導しているかもしれない。なにもあなたのレポートが上達したわけではない。ビジネスマンとしてのキャリアを積んでビジネスレポートのスタイルをある程度マスターしたというだけのことである。
ビジネスレポートの書き方に、定石があるわけではない。しかし参考となるアドバイスは多数ある。なかでもアーネスト・ヘミングウェイのエピソードは外せない。彼の作品は多く翻訳されているが、そのままビジネスレポートの参考として利用できるものである。ヘミングウェイはカンザスシティ・スターという新聞社の記者をしていたことがある。この新聞社のスタイルブックにあったのが以下の鉄則であったと思う。
1.短いセンテンスを使え
2.はじめの方のパラグラフは短くせよ
3.キビキビした言葉を使え
4.否定文でなく肯定文にせよ
新聞記者であったヘミングウェイはこれらの言葉に感銘を受け後にこう語った。
「これらのアドバイスを守りさえしていたら、またいおうとしていることを正しく感じて書いているのなら、よしんばたいした文才がなくとも、うまく書けないはずはない」 逆に悪い文章とはどのような文章であろうか。明治の文豪であった幸田露伴は悪文の条件として以下のように指摘した。
1.語を多くして意を尽くさず
2.辞繁にして簡なるを得ず
3.文飾って趣を成すなき